相続時精算課税制度とは

相続税と贈与税は別物のような感じがしますが、実は表裏一体をなすような税体系になっています。

そこで、これを一連の課税方法とした制度が「相続時精算課税制度」と言われるものです。

この制度の仕組みは、贈与時に贈与税を納付し、相続時にその贈与財産と相続財産を合計して、相続税額から、すでに納付してある贈与税を控除し相続税を納付するというものです。

要件と計算法

相続時までの複数年に渡って2,500万円までの贈与税控除がありますが、これを超えた贈与額分は一律20%の税率が課せられます。

●適用対象者の年齢要件

◆贈与者は贈与した年の1月1日に60歳以上になっていること。
◆受贈者は贈与者の直系卑属で贈与を受けた年の1月1日に20歳以上になっていること。

この制度は「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出して、通常の贈与税方式である、暦年課税方式との選択をするものであり、一度この制度を選択した場合は撤回できませんので、この選択による相続税、贈与税の有利性を考慮する必要があります。

なお、納付した贈与税が相続税より多い時には、その超過分の還付を受けることができます。

計算例1
1年目の贈与額2,000万円 2年目の贈与額1,000万円
      相続時の相続額7,000万円(相続人1名)

<1年目> 2,000万円は非課税枠内なので贈与税は0円

<2年目> 非課税枠の残りが500万円なので 1,000−500=500万円
        500×20%=100万円 100万円の贈与税

<相続時> 相続時前の贈与額合計が2,000+1,000=3,000万円
        3,000+7,000=1億円
        相続人1名ですから基礎控除額は6,000万円
        1億円−6,000=4,000万円 
        4,000×20%−200=600万円 600−100=500万円

したがって、贈与税100万円、相続税500万円となり総納付額600万円となります。

計算例2
1年目の贈与額2,500万円 2年目の贈与額2,000万円
       3年目の贈与額1,500万円 
       相続時の相続額4,000万円(相続人1名)

<1年目> 2,500万円は非課税枠内なので贈与税は0円

<2年目> 非課税枠の残りがないので2,000×20%=400万円
        400万円の贈与税

<3年目> 非課税枠の残りがないので1,500×20%=300万円

<相続時> 相続時前の贈与額合計が2,500+2,000+1,500=6,000万円
        4,000+6,000=1億円
        相続人1名ですから基礎控除額は6,000万円
        1億円−6,000=4,000万円 
        4,000×20%−200=600万円 600−700=−100万円
贈与税として400+300=700万円を納付しているので

したがって、贈与税700万円、相続税納付時に100万円が還付されるので、総納付額600万円となります。

また、それぞれの兄弟姉妹が、贈与者である父、母それぞれに対してこの制度を選択することができます。

それぞれの贈与額 父3,000万円 母2,000万円 祖父800万円
<父> 3,000−2500=500万円 500×20%=100万円
<母> 非課税枠内なので贈与税は0円
<祖父>代襲相続であれば相続時精算課税制度を利用できますが、この場合は通常の贈与税方式を利用します。
(800−110)×40%−125=151万円

総贈与税納付額 100+151=251万円