遺言とは

遺言(ゆいごん・いごん)とは、遺言者の意思によって、その生前の想いを子孫に残すための言葉を文書にしたものと言えるでしょう。

ゆえに、遺言は通常の方式では、一定の事項を記載した文書でなければ有効性がないわけです。

遺言の効果

遺言は未成年者であっても、15歳以上であれば精神的に問題がなければ誰でもできます。遺言の効果は遺言書を書いた時ではなく、遺言者が死亡した時に発生します。

では、遺言は必ずする必要があるのか,どういう時にしたほうがよいのか、またどういう内容にすれば良いのかを考えてみましょう。

被相続人が生きている時は、家族の中では何の争いもなく幸せに過ごせたとしても、相続が始まると誰が何を相続するかで揉め事が始まるのはよくある話です。

民法では、遺言がない限り誰がどれだけの財産を相続するか、その割合が決まっています。

現金なら割合通り分けあうのは簡単ですが、土地や建物なら、その数や大きさ、地目によっては分配が難しくなります。

特に建物が1つの場合、それを売ったお金を分配するということになれば、そこを住居としている親族がいれば大変困ったことになるでしょう。

そこで、遺言でどの土地を誰にどの建物を誰にと指定をすれば、簡単に分けられるわけです。しかし、これは特定遺贈と言って、土地が農地の場合には農地法との兼ね合いも出てくるのでよく検討する必要があります。

★農地法改正(平成24年)に伴い、法定相続人においては、特定遺贈であっても農地法の許可は不要となりました。)

この遺言による相続分の割合は民法に優先し、自分の世話をよくしてくれた長女に全ての財産を相続させるとか、しょっちゅうお金の無心や暴力を振るったりした長男には何も相続させないというように、遺言は被相続人の自由意志によって決めることができるのです。

財産を全くの赤の他人にあげることもできますし、慈善団体に寄付することもできます。

しかしあまりにも配慮のない一方的な遺言は、残された家族にいらぬ問題を発生させかねません。遺言を書くときはある程度、家族と話し合った方がよいでしょう。

この問題には遺留分という法律が含まれてきます。兄弟姉妹が数人いる場合には均等配分が原則ですから、1人だけに相続させるような遺言は、もし誰かが異を唱えれば、その遺言は遺言者の意思どおりには運ばなくなってきます。

●その他、遺言書には何を書くことができるでしょうか。

遺言は自分が死んだ後に自分の意思を尊重してもらうためにあるのですが、内容によっては強制力はないものもあります。

例えば、骨は海に散骨してもらいたいとか、臓器移植に身体を提供したいとかを書くこともできます。

また、遺言内容が複雑な場合や相続時に揉め事が起こりそうな時には、遺言執行人を親族や、第三者である弁護士や行政書士などに指定しておくこともできます。

遺言を書くときに特に気をつけなければならない事は、無効になったり意味不明になったりするような事を書かないことです。

例えば所有権移転をする際に問題が出ないとも限りませんので、「財産を譲る」「あげる」「贈与する」ではなく、「相続させる」と書くべきです。

そして最も大事なことは、署名をし押印をすることと、必ず日付を何年何月何日と書くことです。

絶対に注意したい事は、日付のはっきりしない遺言は無効になってしまいます。

遺言は書いたけれど、その後に気が変わるという場合も少なくありません。民法1022条には「遺言者は何時でも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を取り消すことができる」とありますので、何度でも書き換えることができます。

また、遺言と遺書(いしょ)は別物で、遺書は故人の希望を記す物に過ぎず、それだけでは全くその法的強制力はありませんので注意して下さい。