その他の遺言方法とは

公正証書遺言や自筆証書遺言などの、通常の方法では遺言が出来ない場合、以下の方法により遺言をすることが認められています。

一般危急時遺言(死亡危急者遺言)

遺言者が危篤になり、急いで遺言をしなければならない時に認められます。ただし、普通方式(公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言)の遺言が出来る状態になってから6ヶ月間生存した場合、この遺言は無効になります。

緊急に作るため問題が残ることもあり、回復した後で、普通の遺言が出来る状態になったときは、出来るだけ早く通常の方式による遺言書を作成するほうが良いでしょう。

これは3人以上の証人が必要であり、遺言者はその証人の1人に遺言を口頭で伝えます。これを口授(くじゅ)と言います。

この口授を証人が筆記をし、遺言者と他の2人以上の証人に読み聞かせます。

筆記は手書きでもワープロでも構いませんし、遺言の内容は口授そのままでなくともよいのですが、遺言者の意思を忠実に表現出来ていなければなりません。

その筆記の内容が遺言者の口授通り正しく表現されていることを確認し、証人全員による署名・押印を行います。遺言者の署名・押印は必要ありません。

証人の1人又は利害関係人は、その遺言作成の日より20日以内に相続開始地、若しくは被相続人の住所地の家庭裁判所で確認を受けなければなりません。

難船危急時遺言(船舶遭難者遺言)

乗っていた船舶が遭難し、死亡の危急時にある時は特に深刻な事態なので、一般危急時遺言よりも条件が緩和されています。

証人は2人以上で、口授を受けた筆記は、遺言者や他の証人に読み聞かせなくてもよいことになっています。

証人に署名できない者がいる場合には、他の証人がその旨を付記することでこれに代えることができます。

家庭裁判所による確認も必要ですが、20日以内ではなく、遅滞なく行うようになっています。

一般隔絶地遺言(伝染病隔離患者遺言)

これは、伝染病にかかり、隔離された場所にいるために認められる遺言です。

自筆証書遺言しか出来ないので簡易方式が認められています。

家庭裁判所での隔絶地遺言であることの確認をもらう必要はありませんが、遺言者の死亡後の本人の意思による遺言であるかどうかの検認が必要です。

その他の普通証書遺言ができる状態になって6ヶ月間生存した場合は、無効になります。

遺言者は警察官1人と承認1人以上の立会いのもとで遺言書を作成しなければなりませんが、この場合は代筆でも構いません。

警察官・証人・遺言者・筆記者の全員による署名・押印をします。署名または押印のできない者がいる場合は、立会人又は証人がその事由を付記しなければなりません。

船舶隔絶地遺言(在船者遺言)

船舶中における遺言方式で、伝染病隔離患者遺言とほぼ同じです。

船長又は事務員1人と証2人以上の立会いのもとに、遺言者が遺言書を作成します。この場合も代筆ができ、全員による署名・押印をします。